クリスマスの涙

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「不毛だな」 「そっちのほうがラク。わたしには哲ちゃんもいるから」 「バカか、おれを当てにすんな」 姫良の笑顔はふるえている。 おれでは足りない。 そのとき、ふいに視線を感じて哲は頭を巡らした。 その視線を捉える。 驚きとともに、安心と微量の嫉妬が哲のなかを駆け抜けた。 哲は自嘲する。 「姫良、お役目交代だ。おれは帰るぜ」 いきなり哲は背を向けて歩き始め、姫良は状況を把握できなくて引き止めるすきもなかった。 見守っていると、独り歩いてくる男の横で哲は足を止めた。 姫良の瞳が大きく開く。 哲と彼は言葉を交わしたのだろうか。 その彼が哲と入れ替わりに近づいてくる。
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