クリスマスの涙

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「遠野ですけど、営業企画室の吉川紘斗をお願いします」 受付嬢は 「お待ちください」 と条件反射のように受話器を取りあげた。 その間にも隣の受付嬢が別の来客の応対をしている。 今年も一週間を残すのみで、そのためか日曜日にもかかわらず働く人は大勢いるようだ。 後ろに並んだビジネスマンも気忙しい様子を覗かせている。 「吉川は後ほど連絡を差しあげると申しておりますが」 思ったとおりの反応だった。 だからこそ携帯電話での事前連絡は取らなかったのだ。 「貸して」 姫良は人差し指で受話器を示し、手を差しだした。 受付嬢は電話の向こうに変わる旨を伝えたあと、姫良に受話器を渡した。
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