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どれくらい走ったのか分からないけど息が苦しい。
魔力が無効化されるとここまで辛くなるのか。
「ハァ!ハァ!・・・っぐ、ハァ!ハァ!」
「・・・神楽さん」
「大丈夫。何とかなるから
フランが心配そうに見上げてくるけど笑顔で返してやる。
ネガティブな考えはネガティブな事しか起きなくなる。
「ヒャハハ!逃がさねぇよ!」
「グゥ!・・・うっさい!」
背中を殴られるが、それに耐えて相手を蹴り飛ばす。
「おー痛い痛い」
走るのを止めてしまったせいで俺達は囲まれてしまう。
「ざーんねんだったな?」
「ここは俺達にとって庭みたいなもんなんでな?」
「・・・クソッ!」
俺一人なら何とかなったかも知れないけど、今はフランがいる。
何か現状を打破する方法を探していると、不意に袖を引っ張られる。
「・・・神楽さん。私を置いて逃げて」
「な!?何を馬鹿なことを言ってるんだよ」
「現状、私達は逃げ切れない。なら足手まといの私を使えば神楽さんが逃げれます」
「そんなこと出来るわけがない」
「奴等の狙いは私です。・・・こんなの貴族として産まれて覚悟していました」
「それでも、フランを置いて逃げるなんて!」
「神楽さん!」
フランが大声で叫ぶ。
「私は!私は神楽さんの足手まといになるくらいなら死を選びます。・・・言ったじゃないですか?神楽さんが好きなんだって?好きな人の足枷はごめんです」
ボロボロと涙を溢すフランから目を背けれなかった。
「じゃあなお二人さん。あの世で仲良くやってな!」
「神楽さん!」
「・・・ごめんフラン。やっぱり、大切な友達を見捨てる事なんて出来ないよ」
そうフランに微笑んでいる俺に向かって、盗賊の剣が降り下ろされる。
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