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「みか「はぁ、まったく……」
身体を起こし、帝に話し掛けようとした葵だったが、それは途端に聞こえた大きなため息に遮られる。
迷惑をかけて怒っているのだろうか……と、悪い方向へと考えが向き、こちらにのばされた手に身体が震えた。
だが
頬に触れたその手は、とてつもなく優しいものだった。
「――して」
「え?」
「……どうしてあそこで俺を呼ぶんだよ、お前は」
両手で頬を挟み込まれ、帝の綺麗な顔が徐々に近付く。
「帝……先輩……」
葵は自然と瞼を閉じた。
「んっ」
そして重なる互いの唇……
それは、先程の男のそれとは全く違うもので、すぐに離れてしまったことを残念だと思ってしまった。
「お前があいつを好きだと言うから、わざわざ俺が協力してあげようと……折角お前のこと諦めてあげようと思ったのに……」
コツリと額に額を合わせ、帝は小さく呟く。
あまりの至近距離にある帝の顔が恥ずかしくて、葵は視線を下へと移した。
「ごめん、なさい……っでも、でも!!あの人達に触られた時はホントに嫌で、気持ち悪くて……そしたら帝先輩の姿が頭に浮かんできて……」
「……もういいよ」
ギュッと暖かい腕に抱き込まれ、ポツポツとした葵の言葉は再び遮られる。
その熱に身体から力が抜け、葵はおずおずと帝の背に手を回した。
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