本当に好きな人

4/7
37人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
「みか「はぁ、まったく……」 身体を起こし、帝に話し掛けようとした葵だったが、それは途端に聞こえた大きなため息に遮られる。 迷惑をかけて怒っているのだろうか……と、悪い方向へと考えが向き、こちらにのばされた手に身体が震えた。 だが 頬に触れたその手は、とてつもなく優しいものだった。 「――して」 「え?」 「……どうしてあそこで俺を呼ぶんだよ、お前は」 両手で頬を挟み込まれ、帝の綺麗な顔が徐々に近付く。 「帝……先輩……」 葵は自然と瞼を閉じた。 「んっ」 そして重なる互いの唇…… それは、先程の男のそれとは全く違うもので、すぐに離れてしまったことを残念だと思ってしまった。 「お前があいつを好きだと言うから、わざわざ俺が協力してあげようと……折角お前のこと諦めてあげようと思ったのに……」 コツリと額に額を合わせ、帝は小さく呟く。 あまりの至近距離にある帝の顔が恥ずかしくて、葵は視線を下へと移した。 「ごめん、なさい……っでも、でも!!あの人達に触られた時はホントに嫌で、気持ち悪くて……そしたら帝先輩の姿が頭に浮かんできて……」 「……もういいよ」 ギュッと暖かい腕に抱き込まれ、ポツポツとした葵の言葉は再び遮られる。 その熱に身体から力が抜け、葵はおずおずと帝の背に手を回した。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!