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「俺は大して優しくもなければ、気も短い。
でも、お前はそんな俺を選んだ……そうとっていいんだろ?」
抱きしめたまま、触れそうになるまで唇を葵の耳に近づけ、帝は甘く囁く。
そしてそのままペロリと耳を舐められ、葵は頬を朱く染めた。
恥ずかしそうに顔を帝の胸に押し付け、背に回した手にギュウと力をこめる葵……
だが帝の腕の中で、葵は確かにコクリと頷いた。
「クスッ……じゃあとりあず早く服着ようか?」
「えっ?あッ!!」
そういえばさっき脱がされたままだったと、葵はようやく気付く。
恥ずかしそうにしながらせっせとズボンを上げる葵を見て、帝はクスリと笑った。
「……なんだか、初めて会った時を思い出すね」
「初めて?……あ、そういえば……」
二人が初めて会った時……
それは、襲われていた葵を(善意とは言えないが)帝が助けた時である。
「折角新しい上着とシャツあげたのに、またボロボロだね」
ボタンも飛び散り、悲惨な状態になったそれを手にとり、帝は懐かしげに笑む。
責められているわけではないとわかっていながらも、葵は申し訳なさでいっぱいで、俯いた。
「あの……ッごめ「ご褒美だ」……へ?」
謝りかけた葵の言葉を遮り、帝は自らの上着を葵の身体を隠すようにかける。
一瞬、何のことかわからなかったが、すぐに葵はハッと気付いた。
「(……あの時と同じだ……)」
初めて会ったあの日も、帝はそう言って上着を貸してくれたのだ。
そしてその後は腕を引っ張られていったわけだが……
今回は違った。
帝は顔を上げた葵に優しく微笑むと、不意に彼の胴体と下肢にそれぞれ手を回し、なんとも軽々と抱き上げた。
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