第1章

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 クーシは現商工次官であり、帝国議会の議員である。 商工省に出入りしているシーラスは、クーシとも面識がある。 少なくとも今の会話で、ヨースがクーシを良く思っていないことはわかった。  クーシは、軍需産業とのつながりが強い。 彼の豊富な政治資金は、もっぱら軍需企業から出ている。 当然ウォロスとの戦争には、強硬に賛成している。 そもそも商工省の官僚達は、かなりの人数がそうした軍需企業に天下りしているから、省全体が戦争推進派と言えた。 「軍部には言ってるんだ。  やるなら仕方ないとして、勝ちすぎず、負けすぎず、いい程度で引き上げろとな。  戦争ってのは必ず恨みを生む。  恨みがひどいと、腹芸では収拾がつかん。  もちろん大負けに負けてみろ、この国は吹っ飛んじまう。  だいたいウォロスは強いんだ。  財務省だって戦費獲得で、国債が紙屑みたいに安いってぼやいてる。  どの国もゴルチェが負けるって思ってるんだ。  なのに戦争したい奴がいる」  ウォロスの東方艦隊は世界の列強が恐れる精強さである。 対してゴルチェは、戦場が近海である故地の利はあるが、優位なのはそれぐらいしか浮かばない。
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