第1章

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「面白い親父だっただろう」  帰りのオートモービルで、シーラスが、どこか嬉しそうにそう言った。 「俺のことはどう思ってたんだろうな?」  フェイスは、なぜ自分が招かれたのか、結局いまだにわからなかった。 「おもしろい奴だとは思ってるだろうさ。  何か危害を加えようとか、あの人にはそんな考えはない。  ただ、世間にどんな人がいるのか、いつも知りたがってる。  政府にいるとな、見えなくなるんだ。  世間が本当に何を求めてるのか」  その後、二人は少し遅い昼飯を食い、またのんびりした後、ドライブを楽しんだ。 冬のことで程なく夕方になり、ずいぶん冷え込んできた。 オートモービルの爆音が、冬枯れに遠く響く。 「今日はうちに泊まっていけ」 「おう、最初からそのつもりだ」  シーラスの自宅も、ヨースと同じく郊外にある。 オートモービルいじりが好きで服装にもやたらこだわる英国仕込みの大男が、なぜか最近は農作業も気に入っているらしい。 自宅に向かう途中、芋だ瓜だとおよそ似つかわしくない話題が出て、フェイスは笑ってしまった。 「マーサは、農作業の衣装が似合わんと笑いやがる」 「そりゃそうだろうな。  俺もそう思う」 「俺は気に入ってるんだぜ」
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