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夕闇が深くなる頃、オートモービルはシーラスの自宅にたどり着いた。
これまた豪邸である。
田舎の家屋の体だが、材木など随所に良い物が使われている。
立派な門に土塀、その内側はよく手入れの行き届いたゴルチェの伝統的な庭園である。
その裏手にはオートモービル用の門が別に作ってあり、そこは砂利敷きだった。
砂利を踏みしめながらオートモービルはそこに止まり、二人は降りた。
メイドが迎えに出てくる。
まだ随分若い、小柄で可愛らしい娘だった。
「お帰りなさいませ、旦那様」
「おう、お疲れさん。
マーサは?」
「奥様は舞踊の稽古で、まだお戻りになってません」
「またか。
そういや今日は火曜か。
にしても好きだなぁあいつは。
リル、客を連れてきてるんだ。
というか、こいつはフェイスだ。
冷えるから、暖のある部屋へ通してやって、熱い茶でも出してやってくれ」
それを聞くと、メイドは慌てて頭を下げた。
「あ、フェイス様ですか、初めまして、ようこそお越しくださいました」
「こんばんは、お邪魔します」
フェイスはくたびれたハットを脱いで、軽く会釈をした。
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