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部屋に通され、しばらくすると熱い茶が出てくる。
すぐにシーラスもやってきて、高級な酒瓶とグラスをテーブルに置く。
追ってメイドがつまみになる食べ物を運んできた。
「まぁ長旅お疲れさん」
「おう」
二人はグラスを合わせ、ウィスキーの水割りをぐいと呑んだ。
それからしばらく二人は、イーグの裏通りの酒場がどうの、株がどうのという世間話をしていたが、やがて玄関で人の気配がした。
「ただいま」
そちらに向かってシーラスが呼ばわる。
「おいマーサ、フェイスが来てるんだ」
「あら」
やがて姿を見せたのは、華やかで勝ち気そうな印象の女性だった。
いかにも上流家系の出だとわかる。
西方風の柔らかで女性的なドレスで、手には舞踊の衣装を抱えていた。
「あなた、言ってくださいな、稽古をお休みしたのに」
「なに、構いませんよ」
フェイスは笑って答える。
「リルに言って、寝る部屋を用意してやってくれ。
あと、腹の膨れる物も頼む。
つまみばっかりじゃ、物足りない」
シーラスはそう言う。
夫人は少し呆れた様子で、奥に入っていった。
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