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しばらくすると、麺類や肉類、芋や野菜など、いくつかの料理が出された。
意外にも普通の家庭料理だった。
シーラスは富豪だから、もっと立派な物が出るのかと少し気が引けていたが、杞憂だった。
「しかしこのウィスキーはうまいな」
氷をカラカラ言わせながら、フェイスは喜んだ。
「だろ?
イーグからの輸入品だ」
イーグでは四百年ほど前からウィスキーを生産しており、世界最大の産地である。世界的にも評価が高い。
なお、ゴルチェ国内ではまだウィスキーの製造は行われていない。
「お邪魔していいかしら」
隣の部屋からマーサが顔を出した。
「遠いところお越しになって、ありがとうございます」
「いやいや、こちらこそが一晩ご厄介になります」
「この人しょっちゅうフェイスさんのお話をしてますのよ。
政府の人間だったら面白いのにって」
マーサが言うと、シーラスは苦い顔になった。
「俺なんかは、政治も政権も政府も、柄じゃありませんよ。
流行りの運動家もね。
どこまで行っても俺は研究者です」
フェイスはつり目を細めて笑った。
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