第1章

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 その週末が終わる夜、フェイスは一人、ロキアの駅から夜行特急に乗り込み、トルコーへ向かった。 列車は意外に賑わっていて、国が荒れてはいるものの、経済が発展していることも感じられる。  揺れと騒音、そして二等の寝台車両の固い寝台のおかげでなかなか寝付けない一夜を過ごし、ちょうど半日後の午前九時、ようやくトルコーに到着した。 トルコーは首都の駅であり、その規模はロキアよりも随分大きかった。 ロキア駅も主要な駅であるから決して小さくはないのだが、トルコー駅の規模が凄いと言った方が適切だ。 駅舎は赤レンガ造で、西方風の近代的建築物である。  ひとしきり駅の中でさまよった挙げ句、ようやく目当ての出口を見つけ、改札で切符を渡す。 駅舎はまだしばらく続いて、表通りに出ると、沢山の人力車に混じり、数台のオートモービルが停まっている。 その内、一際スピードの出そうな一台に、背の高い、少し不良っぽい美男子が、葉巻をふかしてボンネットに腰掛けていた。 「おう」  フェイスは手を大きく振った。 するとオートモービルの男も気づいて、葉巻を掲げた。
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