第1章

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 シーラスは、まだ若いが政府系の食品加工会社の役員である。 それ故、商工省との付き合いが深い。 商工省の役人に色々意見しているが、どうも皇帝と軍部が、強気な姿勢を、盲目的に崩さないらしかった。 「戦争は負けてる。  だというのに負けとは言わない。  新聞にも書き立てない」 「まぁそうだろうな」  フェイスはうなずく。 彼もイーグで行われていた報道を知っていた。 だがゴルチェ国内の報道だけしか受け取らない国民は、戦争は好調に推移していると思いこんでいた。 「ロキア大学はどうだった?」 「そうだな、格別なことはない。  ただ、マルコムの信奉者が増えてる気はした」  フェイスの脳裏に、レオーニと、その教え子らしいスタリオスの顔が浮かんだ。 思わずフェイスは苦い顔になった。 「マルコムなぁ、実際どうなんだろうな」 「極端さ、ただ、今のゴルチェの絶対王政よりは、少しだけ進歩的に思う」  マルコムは、近代経済とにおける労働者の生活苦の原因を、特権階級による富の独占によるものと非難し、経済の破綻を予見、そして近代経済に対する対案として、富の再分配を強制的に行う経済方式の提案をした。
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