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シーラスは、まだ若いが政府系の食品加工会社の役員である。
それ故、商工省との付き合いが深い。
商工省の役人に色々意見しているが、どうも皇帝と軍部が、強気な姿勢を、盲目的に崩さないらしかった。
「戦争は負けてる。
だというのに負けとは言わない。
新聞にも書き立てない」
「まぁそうだろうな」
フェイスはうなずく。
彼もイーグで行われていた報道を知っていた。
だがゴルチェ国内の報道だけしか受け取らない国民は、戦争は好調に推移していると思いこんでいた。
「ロキア大学はどうだった?」
「そうだな、格別なことはない。
ただ、マルコムの信奉者が増えてる気はした」
フェイスの脳裏に、レオーニと、その教え子らしいスタリオスの顔が浮かんだ。
思わずフェイスは苦い顔になった。
「マルコムなぁ、実際どうなんだろうな」
「極端さ、ただ、今のゴルチェの絶対王政よりは、少しだけ進歩的に思う」
マルコムは、近代経済とにおける労働者の生活苦の原因を、特権階級による富の独占によるものと非難し、経済の破綻を予見、そして近代経済に対する対案として、富の再分配を強制的に行う経済方式の提案をした。
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