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マルコムの経済思想は、当然労働者階級に好まれ、発祥であるイーグは勿論、遠く離れたゴルチェでも、労働者の中で少しずつ広まっている。
特に学生や文筆家、エスクリ教徒の中で広まりが顕著だ。
「トルコーではマルコム派の集会とかはないのか?」
「あるな。
あるが、騒ぎになるほどじゃない。
ただ、陛下が戦争を早くやめないと、まずいことになるだろうな」
シーラスは少し苛立っている素振りを見せた。
彼は、実務として皇帝や政府重鎮と一緒に仕事をする機会がある。
特に前駐イーグ大使であるヨース外務官とは、非常に懇意である。
その彼が、何か政府に言ってはいるのだろうが、通じていないらしい。
「軍部だ」
その一言に、フェイスは合点がいった。
軍部は戦争を続けたがり、シーラスの苦い顔から察するに、彼と軍部は対立しているのだろう。
「で、今からどこへ行くんだ?」
「あぁ、まずは飯はどうだ。
それでちょっとゆっくりしたら、親父さんの所さ」
親父さんというのは、ヨース外務官の事である。
「本当か?
良いのか?」
フェイスが少し驚いて聞き返すと、シーラスはニヤリと笑い、アクセルを踏み込んだ。
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