第1章

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 マルコムの経済思想は、当然労働者階級に好まれ、発祥であるイーグは勿論、遠く離れたゴルチェでも、労働者の中で少しずつ広まっている。 特に学生や文筆家、エスクリ教徒の中で広まりが顕著だ。 「トルコーではマルコム派の集会とかはないのか?」 「あるな。  あるが、騒ぎになるほどじゃない。  ただ、陛下が戦争を早くやめないと、まずいことになるだろうな」  シーラスは少し苛立っている素振りを見せた。 彼は、実務として皇帝や政府重鎮と一緒に仕事をする機会がある。 特に前駐イーグ大使であるヨース外務官とは、非常に懇意である。 その彼が、何か政府に言ってはいるのだろうが、通じていないらしい。 「軍部だ」  その一言に、フェイスは合点がいった。 軍部は戦争を続けたがり、シーラスの苦い顔から察するに、彼と軍部は対立しているのだろう。 「で、今からどこへ行くんだ?」 「あぁ、まずは飯はどうだ。  それでちょっとゆっくりしたら、親父さんの所さ」  親父さんというのは、ヨース外務官の事である。 「本当か?  良いのか?」  フェイスが少し驚いて聞き返すと、シーラスはニヤリと笑い、アクセルを踏み込んだ。
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