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近くの料亭でゆっくり朝食を取った後、車は郊外へ向かう。
まだ舗装も十分行き届いておらず、揺れがひどく、砂埃が尾を引く。
幌はあるが、暖房はないので随分冷えた。
「いいかフェイス、これからはオートモービルの時代だ。
町中にオートモービルが溢れる時代が来る」
そう言うシーラスの顔は、少年のようだった。
「なんでかってぇとだな、まずは時間。
このオートモービルってのは、時間を縮めるんだ。
時間を制するものは、世界を制する。
それから、何を置いても楽しさだ。
アクセルとハンドルとブレーキ、ミッション、エンジンとか、一度でもいじってみろ、病みつきになる」
オートモービルは黎明期である。
廉価品の量産体制が整うのはまだ数年先であり、この時代のオートモービルは非常な高級品だったが、その中でもシーラスのオートモービルは、非常にスピードが出る逸品だった。
一時間足らずで、トルコー郊外の立派な屋敷に到着した。
使用人と思しい中年のやせた男が出迎え、シーラスはオートモービルを屋敷の中に入れた。
この屋敷にはちょくちょくオートモービルが出入りするのか、駐車場らしい砂利敷きが用意されていた。
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