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フェイスとシーラスがオートモービルから降りたと同時に、声が掛かる。
「遠いところご苦労さん。
それにしてもうるさいから、お前さんだとすぐわかるよ」
出てきたのは四十過ぎの、ずんぐりした円い眼鏡を掛けた、一見人の良さそうな男だった。
一見、というのは、フェイスにはその男の尋常でない迫力が感じられたからである。
「君がフェイス君か、私はゲイル・ヨースといいます、よく来てくれた」
ヨースという男は、ニコリと笑って右手を差し出してきた。
「初めまして、ブロウ・フェイスといいます」
フェイスはそう言ってヨースの肉厚な手を握った。
少しカサカサしているが、冬なのに温かかった。
「ジールからよく君の話を聞いている。
実は私も三年前まではイーグに駐在してたんだ」
「存じてます」
ヨースはフェイスの肩を左手で叩く。
「はっは、私もちょっとした有名人か。
悪口が言いふらされてるんじゃなきゃ助かるな」
そう言ってヨースは大口を開けて笑い、二人を玄関の中へいざなった。
フェイスは警戒しない訳ではないが、彼もまた肝の据わった所があり、遠慮なく邸宅へ入った。
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