第1章

7/18

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
 フェイスとシーラスがオートモービルから降りたと同時に、声が掛かる。 「遠いところご苦労さん。  それにしてもうるさいから、お前さんだとすぐわかるよ」  出てきたのは四十過ぎの、ずんぐりした円い眼鏡を掛けた、一見人の良さそうな男だった。 一見、というのは、フェイスにはその男の尋常でない迫力が感じられたからである。 「君がフェイス君か、私はゲイル・ヨースといいます、よく来てくれた」  ヨースという男は、ニコリと笑って右手を差し出してきた。 「初めまして、ブロウ・フェイスといいます」  フェイスはそう言ってヨースの肉厚な手を握った。 少しカサカサしているが、冬なのに温かかった。 「ジールからよく君の話を聞いている。  実は私も三年前まではイーグに駐在してたんだ」 「存じてます」  ヨースはフェイスの肩を左手で叩く。 「はっは、私もちょっとした有名人か。  悪口が言いふらされてるんじゃなきゃ助かるな」  そう言ってヨースは大口を開けて笑い、二人を玄関の中へいざなった。 フェイスは警戒しない訳ではないが、彼もまた肝の据わった所があり、遠慮なく邸宅へ入った。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加