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「君は正直な所、この国をどう思うかね?」
さらにヨースは切り込んできた。
ちらりとシーラスを見ると、彼は半分目を閉じ、聞いているのか聞いていないのかわからない様子だ。
フェイスは小さく嘆息し、慎重に言葉を選びながら答えた。
「イーグから帰国して感じたのは、私が留学する前より、すこし荒んだかな、ということです。
無論、ご存知のようにイーグは先進国だから、それと比べて見劣りしたのかも知れません。
だからこれは、あくまで印象です。
ただ、つい先日、帰国の翌日のことですが、下級貴族の若者が、列車の中で暴れていました。
聞けば、仕事がないのだそうです。
下級とはいえ貴族ですらそうなのです。
平民はどうだろうと、推し量られます」
フェイスは特段激した様子もなく、穏やかにそう言った。
ヨースはフェイスの言葉に、かすかな殺気を覗かせながら耳を傾けていたが、やがてソファに背中を預け、腕組みをして唸った。
「もっともな事だ」
ヨースは葉巻を咥え、渋い顔で数回ふかし、そのまま黙った。
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