好きと言わないふたり

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笹本はソファに座って朝の情報番組を見ていた。 風呂から上がり、後頭部に話しかける。 「なんか食う?」 昨夜はそのまま眠っていた。 面と向かうのは、なんとなく気恥ずかしい。 「任せます、」 こちらを振り返って、答える。 「ご飯でもいい?味噌汁飲みたいから」 「いいですよ」 リビングに戻ることなく、朝ごはんの支度にとりかかった。 いつもの手順で料理をしていると、緊張もほぐれてくる。 男に朝ごはんを作っている状況が、だんだんおかしくなってきた。 うわあ、笹本と、やったんだよな、おれ。 まじかー、すげえ、ははは、人生いろんなことあるなぁ。 具沢山味噌汁とご飯が炊き上がり、盛り付けの量に悩む。 「出来たけど、量ってどれくらい食べる?」 声をかけると、笹本はソファを立ち上がりこちらに来た。 「自分で注ぐ?」 おれをじっと見て、 「ようやく目線を合わせてくれましたね」 笹本がそう言うのではっとする。 昨夜の行為が思い出され、忘れていた気恥ずかしさに襲われた。 おれは言葉を発せないで固まってしまう。 笹本は、 「傷つくんですけど」 と言いながら、しゃもじでご飯をよそい、コンロにかけてある鍋から味噌汁をついだ。
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