197人が本棚に入れています
本棚に追加
笹本はソファに座って朝の情報番組を見ていた。
風呂から上がり、後頭部に話しかける。
「なんか食う?」
昨夜はそのまま眠っていた。
面と向かうのは、なんとなく気恥ずかしい。
「任せます、」
こちらを振り返って、答える。
「ご飯でもいい?味噌汁飲みたいから」
「いいですよ」
リビングに戻ることなく、朝ごはんの支度にとりかかった。
いつもの手順で料理をしていると、緊張もほぐれてくる。
男に朝ごはんを作っている状況が、だんだんおかしくなってきた。
うわあ、笹本と、やったんだよな、おれ。
まじかー、すげえ、ははは、人生いろんなことあるなぁ。
具沢山味噌汁とご飯が炊き上がり、盛り付けの量に悩む。
「出来たけど、量ってどれくらい食べる?」
声をかけると、笹本はソファを立ち上がりこちらに来た。
「自分で注ぐ?」
おれをじっと見て、
「ようやく目線を合わせてくれましたね」
笹本がそう言うのではっとする。
昨夜の行為が思い出され、忘れていた気恥ずかしさに襲われた。
おれは言葉を発せないで固まってしまう。
笹本は、
「傷つくんですけど」
と言いながら、しゃもじでご飯をよそい、コンロにかけてある鍋から味噌汁をついだ。
最初のコメントを投稿しよう!