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中本さんと渡部さんから話を聞いた週末、おれと幸は少し遠出をして水族館へ行ってきた。
「幸、佐伯くんってどんなひと?」
助手席は手持ち無沙汰だ。真剣な眼差しの横顔に問いかける。
「佐伯くんって、うちの研究室の?」
「そう、あっ、左からおじいちゃんが!」
脱ペーパードライバーのために、きょうの運転は幸がしていた。
「佐伯くんは…マユミさんの同級生で、学芸員をしながら通ってる」
前方を見つめたまま、幸は答えた。
「それだけ?」
「ある意味、教授よりもナゾなひとだけど、知り合い?」
「いや、おれはまだ会ったことがない、幸さ、好かれてるんじゃないの?」
「どうかな?だれにでも、あんなひとだとおもうけど」
あんな、って。「そっか、そろそろ高速乗るよ」
「おっけー」
幸が問題視してないなら、まあ、いいか。
「眠くない?」
「へいき…眠いのは、雅さんでしょ」
「うーん、ちょっと」
「寝てていいですよ」
「いや、それは…」と言いながら、意識がぼんやりする。
起きたとき、外には夕暮れが迫っていた。
車内に流れるオールディーズに合わせて、幸は鼻唄を歌っている。
「スゲェ寝てた」
「10分くらいだけど」
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