197人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなもんかぁ、」
「サービスエリア寄りますか?」
「寄ろっか、休憩しよう」
「佐伯くんのこと、思い出してたんだけど、」
佐伯くん?あ、股ドンの、ね。
「口づけられたことがある」
おお、それは、すごい。
チラリと幸がこっちを見る。
「びっくりした?」
「うん…」どんな気持ちで、されたんだろう。
「あんまり覚えてないんだけどね、新歓で、けっこうぼくも飲んでたし」
事も無げにそんなことを言う。
「ふうん、」
なんだ、酔ってたんなら数のうちに入らない。
「心配?」
心配?というよりも、
「いや、べつに…肉食系なんだな、佐伯くんは」という感想。
「はぁぁ、つまらない」
「は?」
「雅さん、全っ然、嫉妬とかしないよね」
「嫉妬、して欲しいんだ」
前も似たようなこと言われたかも。
「そうじゃないけど、」
サービスエリアが近づき、車線変更をするために視線を配る。
そんな運転に集中している姿とか、佐伯くんはきっと知らない。
交通マナーの悪い車への舌打ちや悪魔のような独り言とか、水族館での一見そうは見えないけどはしゃいでいる様子とか。
そんなのを堪能したあとでは、申し訳ないんだけど優越感しかない。
珍しくあたふたしながら駐車をする様が愛おしくて、バックミラーを睨みつけるこめかみにキスをした。
最初のコメントを投稿しよう!