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「約束がないとは言っていません」
にじり寄られる感じに気持ち悪さを覚えていると、ロッカーに置きっ放しにしていたケータイが揺れた。
天の助け!
迷わずケータイを手に取る。
「はい!笹本です」
「お、出た、山内だけど、もう飯食った?よかったらこれからどう?」
山内さん!ナイスタイミングです!
「いま、バイト終わったとこです、いいですね、ぜひ!」
「ははは、キャラ違うんじゃないか?ま、よかった、リクエストある?」
癒される!じと目で電話の会話を聞いている店長とは雲泥の差だ。
いや、比べるのが山内さんに失礼か。
「お任せします、」
「そう?じゃあ行ってみたいとこがあるからそこにしてもいい?あ、今から出られる?」
「いいですよ、ちょうど着替え終わったので今から出ます」
待ち合わせ場所を決めて、「また後で、」と電話を切った。
耳がくすぐったい。
店長のことは無視をして、あたたかい気持ちのまま待ち合わせ場所に向かいたいが、そういうわけにもいかない。
「と、いうわけで、今回はすみません」
「今、約束してただろ!」
「そんなことないですよ、」
「してた!相手は誰?敬語だから彼女じゃないよな?」
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