花の金曜日

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「大学関係の知り合いです、立場が上のひとからの誘いって断れなくって」 いけしゃあしゃあと、そんなことを言っている自分がおかしい。 「まあ、俺は笹本の一筋縄ではいかない感じも評価している!」 わはは、と笑いながら店長は更衣室から出ていった。 なんだその捨て台詞は。 しんと静まった更衣室で、我に帰る。 勢いで受けてしまったが、山内さんからご飯を誘ってもらった、んだよな。 しかも、今から! 待ち合わせ場所まで、五分もかからない。 大学から来るなら、ぼくのほうが早く着くはずだ。 ソワソワする気持ちのまま、夜の街を歩いた。 夜風は生温く、雨の気配がした。 待ち合わせ場所は、アーケードの交番横のコンビニ。 立ち読みをして待ってもよかったが、ぼくはコンビニの外で行き交う人々を眺めて時間を潰すことにする。 みんなが浮かれて幸せそうだった。 なるほど、これが花の金曜日。 「なにを見ているの?」 「みんな楽しそうだなぁって、おもって見てました」 「笹本も、楽しそうだったよ」 「そうですか?」 路上を楽しそうに眺めているのって、変な人みたいだ。 あ、でも、 「山内さんも、楽しそうです」 ぼくが言うと、 「だって楽しいから」 山内さんは笑ってそう言った。
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