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二十一 ローラン㈦ 殲滅
二十名余りになったローラン市民の我々は、マリオンたちの中にいる我々の系列のエネルギーマスの一部が視覚中枢に伝える、子供たちの遺伝子操作に見とれ、燃え盛るローラン宮の前に立ち尽した。その瞬間、
「うっ？！」
風切り音とともに、大量の矢が我々の身体に突き刺さった。同時に、暗闇の中から、二頭立て戦車の大群が土煙を上げて現れ、ローラン宮の前に倒れた我々の上を、西から東へ駆け抜けていった。我々は子供たちの遺伝子操作に見とれ、近づくパルティア軍本隊の戦車攻撃に気づかずにいた。
薄れゆく私の意識に、『存在』の意思が聞こえた。
『キーヨを通じて忠告したはずだ。なぜ、偵察艦に戻らなかった？』
『クラリックに、ネオテニーを奪われたくない・・・』
『娘の中に留まれ。他の者にも、子供たちの中に留まれと伝えろ』
『なぜ、我々が殲滅される？』
『ネオテニーの精神がお前たちを殲滅したのだ。
クラリックは、埋もれていたネオテニーの精神を掘り出したに過ぎない。
今後二千五百年間、ネオテニーはクラリックの下で、物質的発展を遂げる。
それまで、全てのネオテニーの精神進化は有り得ない。
彼らの物質的発展に対抗できるよう、ニオブとネオテニーのＤＮＡを学び、友の進化を待て』
『どう言う事だ？』
『ネオテニーには金属の武器がある。未来の彼らは、さらに進歩した武器を持つ。
お前たちは彼らに対抗せねばならぬ』
『ヘリオス艦隊を使って殲滅すればいいではないか』
『何のために階梯を進めた？』
『・・・』
私は何も主張できなかった。
『キーヨ。ローラン市民に留まっている我々ニオブは、どれだけ残ってる？』
『旗艦〈ガヴィオン〉のパロット、アーマー階級だけだ』
『プロミドンで、我々をマリオンに回収してくれ』
『了解。やってみよう』
我々はローラン市民からマリオンに精神共棲した。
ローラン市民は絶滅した。
都市国家ローランが壊滅したその後。
生き延びたマリオンと子どもたちはローランに残り、子孫を残した。ケイト・レクスターが語ったように、マリオンは出産後も老化せずに若いままだった。
第七階梯の私とパイロットたちアーマー階級はマリオンに精神共棲していたが、偵察艦のプロミドンを使い、マリオンの外でも実体を持って存在するのが可能になっていた。このような事はマリオンにも可能だった。つまり、プロミドンが私とマリオンの精神エネルギーレベルを第八階梯まで高めていたが、実際は『存在』から何らかの力が働いたのはまちがいなかった。かつてマオトはガイアの力を得て、単独でこの過程を進んでいた事を思うと、『プロミドン』と『存在』と『ガイア』の
三要素が働いた結果と考えられた。
我々が遺伝子を操作したからと言って、マリオンは不滅ではなかった。若い姿のまま、ネオテニーの平均的寿命の五倍の生涯を生きて衰弱した。私はマリオンの身体から腐敗要素を排除して身体を維持し、マリオンの精神エネルギーとともにマリオンの中に留まった。同時に、子供たちと子孫の間を移動して子孫たちの遺伝子を修復し健康を保った。移動は精神生命体の私たちだから可能だった。
『存在』は我々にわかるよう、デカン高原の部族に精神共棲したとポーン階級トトの種の、シンの精神エネルギーマスへ、ガイア時間で二千五百年後に、マリオンと我々を復活させるよう思念波を送った。我々とクラリックのどちらが選ばれるか不明だが、全てが予定されているらしかった。
（Ⅰ Ancient Universe ガイア開闢 了）
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