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「 …赤いですね」
言うと、うるせ、と、徳丸くんの口が尖る。
だから私も気が抜けて、ぷはっと口を開ける。
笑ってしまった。
「…私も少し、キュンとしてしまいました」
口を突いて出た本心。
すると徳丸くんが、「え」って豆鉄砲食らったような顔になり、
でもその直後、カウンターの上からぬうっと朝日のように出てきた小橋の顔に、
ギャーッと突き抜けるような悲鳴を上げてしまった私はまだまだ未熟者。
ーー本当は昨日、泣いてすっきりしてた。
だから百歩譲って徳丸くんがノリちゃんの言ってたような人でも、私には関係ない。
だって昨日2コール目で出てくれた徳丸くんが、今の私にとっては全てだ。
昨夜、落ち着けと叫んだ彼が、
すぐ赤くなる耳を持つ彼が、
すぐ不貞腐れる彼が、
背が高くて手が大きくて、ちょっと鳥の巣のような頭の彼が、
そして今日、キュンキュンするゲームとか可笑しな事言って元気付けてくれようとした彼が、
私の知ってる全部。
義理もないし貸し借りもない。
男女関係にさえならなかったら、何も問題はなさそう。
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