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2XX0年、世界は技術躍進を繰り返し完全なシステム社会と化していた。その社会の中で技術という明るさはより輝きを増し、格差という闇はさらに深く濃いものとなった。人々はそれを是として受けいれ、システムの中の歯車になることを選んだ。少しでも軋んでいるものは排除し、従順な歯車のみで大きな機械を組み立てていこうとしたのだ。
そして、その高度化には影がツキモノだった。
社会から爪はじきにされた歯車たちは、その明るさの陰で暗躍し始めた。
他者からの理解など求めず、自身の求める道をただひたすらに進む。それが彼らの信条であり行動だった。
より一層深みを増す真っ暗な闇。その闇というキャンバスを赤の絵の具だけを持った彼らが、銀色の筆で鮮やかに彩る。その光景は優雅で荘厳で、さながら1つの作品のような美しさを孕んでいた。彼らは夜にしか活動しない、美を追求する芸術家。そして夜の芸術家である彼らは世間でいうところの「異端児」。
鮮やかな芸術活動は「殺人」。
彼らの芸術は常人には理解されない代物だった。常人の常識であるところの法律にいくつも触れ、それでもなお「美しさ」を求めた結果の1作品。
真っ暗な黒に走る透き通るような赤、あるいは黒を覆い尽くすように力強く光る赤、黒いキャンバスに使える色は赤1色なのに、出来上がる「作品」の声は「作品」ごとに違う…それこそがこれを芸術たらしめている要因だろう。
─と、優美に脚色してみたわけだが結局のところ、彼らは筋金入りの連続殺人鬼。連日ニュースでも報道されている世間を騒がす連続殺人事件の犯人だ。
どんなに社会が発展しようと、その社会を生きる人間は大して変わらない。社会が高レベルなものだからと言って、人間も高レベルなものかといわれたらそうではない。だからこそ彼らが何人もの人を殺めようと捕えられることはない。
彼らは日々のニュースにほぼ毎日のように名を刻んでいた。
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