GHOST

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善良な市民を守る、という下命を持つ警察組織にとって、この犯罪者の横行は許されるものではなかった。どうにかしてこの犯罪の流れを断ち切らなくては、真に「進んだ社会」とは言えない。ただでさえ他国に比べて今、この国の犯罪は多い状況にある。しかも社会が発展するにしたがって、凶悪事件の占める割合が上がってきていることは無視できない事実だ。 警察当局は考えた。 どうすれば1番スムーズに、被害を少なく、警察の名を落とすことなく、これらの凶悪事件を解決することができるのかと。 ─警察は自分たちの保身を念頭に置いて考えていた。そんな人々が理想手を導き出せるわけがないのはいうまでもない。 そして無能な警察組織はすべてを公安警察局に委ねた。 公安警察局は警察組織と似て非なる組織。汚い話をすれば警察に努めるよりも公安に努めるほうが給料はいいが、公安の仕事は基本的に激務であり警察よりも死亡確率も高い、比較的危険な組織であるといえる。 事件の解決を至高とし、捜査方法は世間の常識から逸脱する場合もある。それが公安局という組織だった。 自ら公安局を志望して職員となることもあるがそれはとても稀なケースだ。 ただでさえ激務しかないといわれる職場に、この近代のぬるま湯に浸かってきた若者が入るはずもなく相当な変人か、あるいは警察当局からの推薦という名の左遷でしか職員は増えない。 そして。 「今日付けで神崎 茅[かんざき ちがや]を公安局の配属とする」 この日また1人、警察当局から公安局への推薦者が出た。 名は神崎 茅[かんざき ちがや]。 2年前に警察官になったわりと新参者の刑事である。 東地区の警察当局は彼を公安局に推薦することで、連日の連続殺人事件からは手を引くことを表明した。
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