第一章 相対取引(あいたいとりひき)

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 夜明け前。  一日の最低気温は、きっとこの時間帯に観測される。  私は、なんとか布団から抜け出し、バイトへ行く準備を始める。  バイト中は上から制服を着るから、中は厚着できない。ダウンジャケットを着て、マフラーを巻きつけ手袋をはめ 、家を出た。  まだ、起きている人も少ない。  街灯に照らされた息が真っ白で、ため息を吐くとさらに伸びた。  頬が痛くて手袋の手のひらで覆い隠す。モールの肌触りが心地よかった。  今は、耳が隠れるように、髪をおろしている。  時間に余裕はあるけれど、小走りで住宅街の細い道を曲がり、大通りへと向かう。   
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