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手を開いて見ると、遊園地のパスポートが幾枚も握らされていた。
「今度、お母さんとお父さんに連れてきてもらえよ」
僕は典史兄ちゃんとまた来たい。
「典史兄ちゃんも一緒がいい」
「いいよ」
大好き、伝わって良かったねかのこちゃん。僕も、僕の天使に大好きが伝わったらいいな。
「典史兄ちゃん、大好き」
「俺も、一穂大好きだよ」
兄ちゃんがきて、典史兄ちゃんを怒っている。兄ちゃんが行く先々で女の子に口説かれ、その度に僕らは置いてきた。
「黒井、今度二人で来ようよ」
「嫌だよ」
典史兄ちゃんだって、僕を連れていなかったらモテモテなのかもしれない。だって、夜の遊園地の中でも、皆振り返って見ている。
「あれ、直哉一人か?」
写真を送ったせいで、彼女の友達が沢山来てしまって、彼女は友達と行ってしまったのだそう。
「そう、でも典史を見つけられて良かった。座敷童子も解決したみたいね。花火を見たら一緒に帰ろうよ」
土日のイベントで、花火が上がる。この花火は見覚えがあった。かのこちゃんの覚えていた花火だった。
一番幸せな時に見た景色を抱いて、かのこちゃんは天国に行ったと思う。
了
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