コミュニケーション エラー

13/13
前へ
/13ページ
次へ
 手を開いて見ると、遊園地のパスポートが幾枚も握らされていた。 「今度、お母さんとお父さんに連れてきてもらえよ」  僕は典史兄ちゃんとまた来たい。 「典史兄ちゃんも一緒がいい」 「いいよ」  大好き、伝わって良かったねかのこちゃん。僕も、僕の天使に大好きが伝わったらいいな。 「典史兄ちゃん、大好き」 「俺も、一穂大好きだよ」  兄ちゃんがきて、典史兄ちゃんを怒っている。兄ちゃんが行く先々で女の子に口説かれ、その度に僕らは置いてきた。 「黒井、今度二人で来ようよ」 「嫌だよ」  典史兄ちゃんだって、僕を連れていなかったらモテモテなのかもしれない。だって、夜の遊園地の中でも、皆振り返って見ている。 「あれ、直哉一人か?」  写真を送ったせいで、彼女の友達が沢山来てしまって、彼女は友達と行ってしまったのだそう。 「そう、でも典史を見つけられて良かった。座敷童子も解決したみたいね。花火を見たら一緒に帰ろうよ」  土日のイベントで、花火が上がる。この花火は見覚えがあった。かのこちゃんの覚えていた花火だった。  一番幸せな時に見た景色を抱いて、かのこちゃんは天国に行ったと思う。   了
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

79人が本棚に入れています
本棚に追加