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朝食のハンバーグをあげようとすると、食欲無いのか?と、心配されてしまった。
「一穂、典史、大好きなんだな」
直哉兄ちゃんも好きだけど、多分、桁が違うのだ。
「大好きだよ」
直哉兄ちゃんも、それ以上は突っ込みが入れられない。
「そうか…」
兄ちゃんに至っては、僕の典史兄ちゃん大好きは無視だ。そもそも、兄ちゃんが典史兄ちゃんを見つけて、家に連れてきたのだけど、
脅したり騙したりは日常茶飯事だ。なのに、典史兄ちゃんは、兄ちゃんを信頼している。どうしてなのかは、僕には分からない。
「黒井、今度、遊園地に行くか?」
兄ちゃん、携帯で何かを見ていた。
「行かないよ。又、遊園地に迷子の幽霊が出るとか何かだろ。俺は、霊が見えないし霊の声も聞こえない」
霊能力者をやっているけど、典史兄ちゃんは霊感がない。
「じゃ、デートで」
「又、騙して現地まで連れて行こうとかするなよ」
ケンカばかりしているのに、よく一緒に出掛けてゆく。
「座敷童子の館というのが出来たのだけど、パワースポットで人気。本当の座敷童子らしいぞ」
典史兄ちゃんが深いため息を吐いた。
「害が無いなら、放っておけ」
霊にだって色々ある。座敷童子に、どうして座敷童子になったのかを聞いたら、大切で守りたい存在のため、頑張ろうと思っていたらなっていたと言っていた。
遊園地にきっと大切なものがあったのだ。そっとしておいてあげればいい。
「それに、ここにも座敷童子に近い一穂が居るだろう。ちゃんと遊んでやれ、兄貴なんだから」
兄ちゃんと遊びたくない。兄ちゃんと居ると、厳しい先生が一緒のようで、緊張するから嫌だ。
「典史兄ちゃんがいい」
あらあら、ずいぶん懐いてしまってと母さんが笑うけど、懐いているのではない、僕は恋人候補だ。兄ちゃんのライバルだ。
「俺か、じゃ休み取るかな。一穂と遊園地行くために」
典史兄ちゃんとデートだ。
「俺はダメで、一穂は即答OKか」
僕は、本当に嬉しかったのに、次の土曜日に遊園地に行こうとすると、兄ちゃんも直哉兄ちゃんも一緒に付いてきていた。
二人きりが良かったのに。
直哉兄ちゃんは、現地で彼女と待ち合わせていた。彼女は、サッカー部のマネージャーで秘密の交際なのだそうだ。元気のいい女の子で、直哉兄ちゃんが振り回されている。
「本当だ、御形君と黒井君、二人が揃っているなんて、凄い!学校の二大アイドルなのに!」
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