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典史兄ちゃんが、学校で人気だったとは知らなかった。
「写真送ってみよ。皆驚く」
はいはいと、直哉兄ちゃんがうなずいていた。
「黒井君、私服も可愛い。皆、近寄りがたいとか、話しかけられないとか言うけど、喋ると普通なのにね」
典史兄ちゃんも、直哉兄ちゃんと同様にあいまいにうなずいていた。逆らわない方がいい人なのかもしれない。
「黒井、行くぞ」
兄ちゃんに、顎で呼ばれて、座敷童子の館に行った。
沢山の人形と、甘味処、おもちゃが置かれていて、沢山の女の子が来ていた。女の子は、兄ちゃんに見とれている。兄ちゃんは、確かにかっこいい。
「一穂、座敷童子は居る?」
この建物に、座敷童子は居る。可愛い女の子で、甘味処の椅子に座って、店内をにこにこと楽しそうに見ている。
「居るよ、すごく楽しそう」
「そうか、良かった」
無理やり繋がれているとかではなくて、典史兄ちゃんは安心したみたいだった。
「一穂、何か食べようか?モテモテの志信はあっちに置いておくとして」
あちこちの女の子から、兄ちゃんは声を掛けられていた。
「アイス」
アイスとコーヒーを注文すると、座敷童子と目が合った。
「かのこちゃんと言うのだって」
声も聞こえてきていた。
「共鳴するな一穂」
典史兄ちゃんが、ちょっと険しい顔をして羽で僕とかのこちゃんを遮った。
典史兄ちゃんの羽は、最強の結界で悪意のある者は、何であっても近寄れない。でも、悪意があればの限定がつく。遮られてかのこちゃんは、羽をどけて僕の前に来た。
「私が見えるのね」
典史兄ちゃんが、気配で分かったのか、頭を抱えた。
「俺、自分の結界内なら多少は分かるの。君、死んでいるよね。座敷童子でも、俺、一穂に近づく霊は消すよ」
典史兄ちゃんは、僕も羽で囲んだ。ふわふわしていて温かい。実体化していなくても、羽はとてもやさしい。
「ママが大好きなの。ママとずっと一緒に居られたらいいけど、ママが泣くとすごく悲しい。ママを幸せにしたいの」
かのこちゃんの気持ちは、すごく良く分かる。幸せにしたいのに、どうして泣いていてもどうにもできないのだろう。僕もいつももどかしい。
「ママはあの人だよね」
甘味処で、造りながら運んでいる、にこやかな女性が居た。
「うん。でね、かのこが死んで、パパと別れてしまったの。でもね、パパもここに来るよ。本当はパパはまだママが好き」
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