コミュニケーション エラー

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第一章 天使と過ごす  お兄ちゃんはズルイ。僕には座敷童子と遊ばずに、人間と遊べと言うくせに、自分は天使と友達だ。  天使、黒井 典史(くろい てんし)僕は、典史兄ちゃんと呼んでいる。本当に綺麗な天使で、庭の鯉なんて、エサもやらないのに典史兄ちゃんが近寄ると、皆寄ってくるくらいだ。  典史兄ちゃんは、普段はキラキラした光の羽を背負っているが、羽を実体化してと頼むと、ふかふかの羽にしてくれる。ふかふかの羽を布団にして、昼寝をしたら最高の気分になる。  羽があって、どうやって生活しているのか不思議に思っていたら、この羽は典史兄ちゃんのことが心から好きで、大切だと思っている人にしか見えないと最近分かった。  僕の兄ちゃんは、最近までこの羽が見えなかったのだけれど、今は見えているらしい。兄ちゃんは、ちっとも典史兄ちゃんを大切だとは思っていない感じで、こき使っている。  話しは戻るけど、僕の家は山の上の寺で、近所と呼べる家は一軒もない。学校の友達も、一番近いところでも、歩いて三十分以上かかる。そもそも、一番近くの民家まで、歩いて三十分かかる。  どうやって、友達と遊ぶのだ。兄ちゃんはいい、同じ年の典史兄ちゃんも、直哉兄ちゃんも、事情があるといって、一緒に住んでいるのだから。ケンカしたり遊んだりと、毎日できる。 「一穂、おやつよ」  母さんが呼ぶ。今日は、典史兄ちゃんも、兄ちゃんも家に居たはず。一人じゃない、と、はりきって居間に行ったのに、僕一人だった。 「兄ちゃんは?」  一人は寂しい。 「お寺の説法を聞きにいったのよ。今まで興味なかったのにね、典史ちゃんが聞きたいって言ったものだから…」  でもね…と母さんが、頬を手に当てて困ったように笑っていた。 「典史ちゃんが寺に居ると、私、笑ってしまうのよね…」  想像して笑っている。僕も、典史兄ちゃんが寺の中を歩いているだけで、考え事をしてしまう。  天使が寺で説法を聞く。典史兄ちゃんは意外と真面目で、正座したりするのだけど、見える人には最初から羽が見える。その姿は、ミスマッチ?なのだと、父が言っていた。 「だって、典史ちゃん。どう見ても、羽なんて無くても天使じゃない、あの姿はね。それが、仏教なのよ…」
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