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本の先には、持ち主が居て、それは今父と話している人らしい。
「一穂。一穂は、共鳴が強いから、あまり蔵の物には触れてはいけないよ」
それは兄ちゃんにもよく言われている。今回は、二人にも迷惑をかけてしまった。
「黒井!」
兄ちゃんが、部屋に飛び込んでくると、典史兄ちゃんを抱きしめていた。
「良かった、戻って来た」
兄ちゃんも、多分典史兄ちゃんが好きなのだと思う。
「アツアツね」
直哉兄ちゃんは、呆れて部屋を出て行った。直哉兄ちゃんには、彼女が居る。でも、一人ではないと、最近知った。
僕も部屋を出て行ったふりをする。すると、兄ちゃんは典史兄ちゃんにキスをする。
凄く凄く悔しいけれど、典史兄ちゃんもきっと兄ちゃんが好きだ。
本の持ち主は、亡くなった奥さんを忘れられてしまうのが怖くて、毎日を過ごしていたら、目の前に本が出現してしまったそうだ。怖くなって寺に納めたけれど、本と本の中から天使二名が飛び出してきて、腰を抜かすほど驚いたそう。
忘れられるよりも怖いことは、忘れられないこと。人間はそうやって生きてきた、人は死んだのではなく終わっただけだ。終わりならば、又、始まればいいだけなのだ。だから、一秒も一生も同じ重みで大切なのだと、天使は語る。
第三章 大好き
直哉兄ちゃんは、僕にサッカーを教えてくれる。元々、弟が居たせいか、凄く教えるのが上手い。
直哉兄ちゃん曰く、典史兄ちゃんも物凄く運動神経がいいそうだ。見た目が天使で、どこかトロそうにも見える典史兄ちゃんだけど、ケンカも強いのだそう。
僕は典史兄ちゃんを守ると決めているけれど、もっと頑張らなくてはいけないのかもしれない。
学校の勉強も頑張るけれど、僕、運動も頑張る。
庭を横切る典史兄ちゃんが見えたので、後を追いかけてみると、羽をドアにぶつけて痛がっていた。
実体化した羽がぶつかると、痛いらしい。何故、羽を実体化していたのかと言うと、占いの館で、ラッキーアイテム、天使の羽として大人気なのだそうだ。抜けた羽を、レジ袋に入れてまとめているが、沢山あるとありがたみがない。
夕食を食べたら、占いの館にアルバイトとして行ってしまう、そして、深夜まで帰って来ない。
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