コミュニケーション エラー

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 母さんも父さんも、アルバイトなんてしなくていいよと、言っているのだけど、基本、天使兄ちゃんも直哉兄ちゃんも、親元を離れて自立している。親の援助なしで、生計を立てている、すごい二人だ。  典史兄ちゃんは、占いの館では、春日蓮さんのアシスタントで働き、他に典史兄ちゃんの母親と祖母は霊能力者で、そのアシスタントでも働く。他に、レストランでもバイトしていて、本当に忙しくて、家に居るのは夕食と、朝食くらいしか居ない。  もっと一緒に居たいのは、兄ちゃんも一緒のようで、よく口論している。でも、兄ちゃんは学校が同じなのだから、まだいい。僕なんて、本当に少ない時間しか会えない。  もっともっと一緒に居たい。朝から夜まで、一緒に居たい。できるなら、夜も一緒に居たい。  走って行って、典史兄ちゃんに抱き付く。 「どうした一穂。直哉に苛められたか?」  僕は首を振る。後ろから抱き付くと、羽が邪魔になる。典史兄ちゃんが、羽の実体化を解くと、光の中に居るような光景になった。こんなに綺麗な人が、人間ではなかったのはとても悲しい。人間だったら、兄ちゃんの恋人でも許したかもしれない、けれど、天使は独り占めしてはいけない。いや、人間でも天使でも、僕が大好きな典史兄ちゃんで、僕が独り占めしたいだけなのかもしれない。 「大好き、典史兄ちゃん」 「そう言われると、元気が出るな」  光が零れるような笑顔。この笑顔は、兄ちゃんは知らないだろう。兄ちゃんは、いつも典史兄ちゃんを困らせているから。  その日の深夜、典史兄ちゃんはアルバイトから帰って来たけれど、僕は知っている、大怪我していた。天使のせいか、朝には何も無かったように怪我は治っているけれど、羽をドアにぶつけても、しゃがみ込んで痛がっていたくらいだ。治っても、痛いのだ。  犯人は、霊能力者で、仕事を取られたとかの逆恨みにあってバイクで、轢き殺されそうになったのだそうだ。  母さんも気が付いて泣いていた。どうして平気だと言うのだろう。いつも、平気だ大丈夫だと、人を助けたのに傷だらけで、必死で頑張っているのに、感謝もされなかったりする。  典史兄ちゃんは、たまに感謝されたりすると、本当に嬉しいから、それでいいと言うけれど、僕は悲しい。  僕は典史兄ちゃんを、大切に大切にしてあげたい。 「典史兄ちゃん、ハンバーグ食べる?」
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