第一章 天使と過ごす

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 高価な花瓶や、襖を羽が通り過ぎる。 「一穂、 志信(しのぶ)は起こさなくていいのか?」 「いりません」  大好きな典史兄ちゃんと、 二人きりの邪魔はされたくない。 手を繋いで、寺を出ると、 大きな青空が屋根の上に見えた。  典史兄ちゃんが、大きく羽を開いて、 何度か羽ばたいた。 兄ちゃんも言っていたけど、 典史兄ちゃんが外で羽を広げていると、 どこかに飛んで行ってしまって、 二度と会えない気がする。  しっかりと手を繋いでみたけど、 心臓がドキドキしていた。 だから、鳥は籠の中に居るのだと、 すごくよく分かる。 二度と会えなかったら、 いつまでも悲しい。
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