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高価な花瓶や、襖を羽が通り過ぎる。
「一穂、
志信(しのぶ)は起こさなくていいのか?」
「いりません」
大好きな典史兄ちゃんと、
二人きりの邪魔はされたくない。
手を繋いで、寺を出ると、
大きな青空が屋根の上に見えた。
典史兄ちゃんが、大きく羽を開いて、
何度か羽ばたいた。
兄ちゃんも言っていたけど、
典史兄ちゃんが外で羽を広げていると、
どこかに飛んで行ってしまって、
二度と会えない気がする。
しっかりと手を繋いでみたけど、
心臓がドキドキしていた。
だから、鳥は籠の中に居るのだと、
すごくよく分かる。
二度と会えなかったら、
いつまでも悲しい。
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