第一章 天使と過ごす

3/13
前へ
/49ページ
次へ
 僕の兄ちゃんは、 最近までこの羽が見えなかったのだけれど、 今は見えているらしい。 兄ちゃんは、 ちっとも典史兄ちゃんを大切だとは思っていない感じで、 こき使っている。  話しは戻るけど、僕の家は山の上の寺で、 近所と呼べる家は一軒もない。 学校の友達も、一番近いところでも、 歩いて三十分以上かかる。 そもそも、一番近くの民家まで、 歩いて三十分かかる。  どうやって、友達と遊ぶのだ。 兄ちゃんはいい、 同じ年の典史兄ちゃんも、直哉兄ちゃんも、 事情があるといって、 一緒に住んでいるのだから。 ケンカしたり遊んだりと、 毎日できる。 「一穂、おやつよ」  母さんが呼ぶ。 今日は、典史兄ちゃんも、 兄ちゃんも家に居たはず。 一人じゃない、と、 はりきって居間に行ったのに、 僕一人だった。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

213人が本棚に入れています
本棚に追加