第一章 天使と過ごす

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「兄ちゃんは?」  一人は寂しい。 「お寺の説法を聞きにいったのよ。 今まで興味なかったのにね、 典史ちゃんが聞きたいって言ったものだから…」  でもね…と母さんが、 頬を手に当てて困ったように笑っていた。 「典史ちゃんが寺に居ると、 私、笑ってしまうのよね…」  想像して笑っている。 僕も、典史兄ちゃんが寺の中を歩いているだけで、 考え事をしてしまう。  天使が寺で説法を聞く。 典史兄ちゃんは意外と真面目で、正座したりするのだけど、 見える人には最初から羽が見える。 その姿は、ミスマッチ?なのだと、 父が言っていた。 「だって、典史ちゃん。 どう見ても、羽なんて無くても天使じゃない、 あの姿はね。 それが、 仏教なのよ…」
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