第三章 大好き

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 典史兄ちゃんの羽は、 最強の結界で悪意のある者は、何であっても近寄れない。 でも、 悪意があればの限定がつく。 遮られてかのこちゃんは、 羽をどけて僕の前に来た。 「私が見えるのね」  典史兄ちゃんが、 気配で分かったのか、頭を抱えた。 「俺、自分の結界内なら多少は分かるの。 君、死んでいるよね。 座敷童子でも、 俺、一穂に近づく霊は消すよ」  典史兄ちゃんは、僕も羽で囲んだ。 ふわふわしていて温かい。 実体化していなくても、 羽はとてもやさしい。 「ママが大好きなの。 ママとずっと一緒に居られたらいいけど、 ママが泣くとすごく悲しい。 ママを幸せにしたいの」  かのこちゃんの気持ちは、 すごく良く分かる。 幸せにしたいのに、 どうして泣いていてもどうにもできないのだろう。 僕もいつももどかしい。
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