第一章 天使と過ごす

9/13
前へ
/49ページ
次へ
 膝の上に座ると、 典史兄ちゃんはいつもリンゴのような香りがする。  人間は罪を持っている、それを自覚して生きること。 説法が身に染みる、僕はこの典史兄ちゃんが、 世界中で一番好きだ。 初めて、 母さんよりも好きになった人が、 典史兄ちゃんだ。  すごく綺麗で、危なっかしくて、 優しくて強い。 兄ちゃんが、 僕の霊障のために、連れてきた人。 僕は、一目で典史兄ちゃんが大好きになった。 「終わったみたいだ、帰ろう。 一穂」  兄ちゃんは、眠ったままでいい。 僕が、典史兄ちゃんを独占する。 「あっ」  父が、こちらを向いて小さく驚く。 典史兄ちゃんの羽は、 壁や戸をすり抜けるのだけど、 見えてしまうとぶつからないかと心配になる。 本人は、全く気にしていないみたいだけど、 周囲はちょっとハラハラする。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

213人が本棚に入れています
本棚に追加