第2話 ランナー

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その時、後ろから生き残りの男が叫んだ。 「おい!いい加減に止まれ!!」 彼は誰に話しかけているのか? 一瞬分からなかったが、 「お前だ!黒いリュックの!」 ともう一度聞こえて、どうやら私のことだとわかった。 私はゆっくりと速度を落としていき、止まった。 はぁ…はぁ… 生き残りも追いついてきて、目の前までやって来た。 あれ? 後ろを見たが、何かが追ってくるような気配は無い。 もしかして、あの20人はこの私を追いかけてきていたのか? 「お前、自分が何したのかわかってるのか!?」 あれ?何やら怒られているぞ… え? 「とぼけるな!!カバンの中を見せてみろ!!」 めちゃくちゃ怒ってる…あ、カバンの中まで漁られてる… 「ほら、これはウチの商品だろ!」 あ… 「お前がしたのは万引きだぞ!!」 そういえば、カオリを見つけて嬉しすぎてテンション上がって… レジを通すの忘れてたっけ… すいませんでした!! ようやく自分の犯した罪に気づいた私は頭を下げて謝った。 そうか…。 万引きをしたからずっと追いかけられてたんだ…。 なんてことをしてしまったんだ…。 何が得体の知れない恐怖の対象だ…。 気付かない内に万引きしてしまう私こそが恐怖の対象じゃないか… 店員さんは、謝って代金を支払うと許してくれた。 「それにしても、よく3時間も走り続けられたな…陸上でもしてたのか?」 そう話した店員さんのエプロンについている名札を見て驚いた。 内田…まさか、あ、内田君じゃないか! 「お前…よく見たら木村じゃないか!」 なんと店員さんは、私を陸上部に誘ってくれた内田君だった。 もちろん内田君も長距離の選手だったのは言うまでもない…。
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