第1話 ボックス

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財布の中にはテレホンカードが一枚入っていた! 入っていた! びっくりしたが、これは会社の新年会のくじ引き大会で当たった(ハズレた)ものだった。 まぁ、これが無くても小銭はあるので問題はないのだが… カードを入れて、数字を触れようとしたその時… あ、妻の電話番号… 何番だ…? 分からない… いつもはスマホの通話アプリでやりとりしているため、電番など把握していなかった… どうしよう… もうこれは野球中継も諦めないといけないかもしれないな… 「あの…」 ?! 今後ろから声がした…。 一瞬驚いたが、電話ボックスを利用したい人がいるんだと思って振り返った。 あ、あなたは… そこにいたのは、ビニール傘を渡してくれたあの女性だった… 「あの…」 弱々しい声で話すその女性は、雨でずぶ濡れになっている…。 雨にこれ以上濡れないように中に入れてあげようかと思ったが、狭いのでそれは難しいなと思ったすぐ後に今度はさっきの傘のお礼を言ってないなという考えが頭をよぎった。 「あの…私、番号分かりますよ。」 色々な考えを巡らせていた間に、女性が何かとんでもないことを言った気がした。 え?番号を知ってるって? 妻のスマホの? なんで? その時、女性が一瞬微笑んだように見えた。 うっ… なんだか嫌な予感がしてきた…。 寒気がする…。 薄い透明の板を挟んで走る緊張… 「私…番号分かりますよ…。」 その後、女性は番号を口にし始めた。 その番号は自分の中にうっすらと残っていたものと一致した。 一致してしまった。 なんの冗談なんだ… あれか? 妻の友だちか? だから、番号を知ってるのか? しかし、よく家に遊びに来る長谷川さんや高城さんではなさそうだ… そうだ、今聞いた番号にかけて妻に聞けばいいのだ。 向こうも板の向こう側にいるから手は出せないだろう…。 ん?手を出してくる可能性があるのだろうか…?
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