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窓を開けても空はそこにいないけど。
離れても空のほうからきてくれる。
つきあうの言葉はないけど、彼女にしか思えないつきあいをしていると思う。
たぶんきっと、つきあっていても同じ不安になる。
空の夏休みが終わると、俺のほうはまだ夏休みだからバイトの連休もらって実家に帰る。
それでも休みが終われば、また1週間に1回会えればいいほうのつきあいに戻って淋しくなる。
冬休みまで我慢したら、空の受験勉強のラストスパート。
バイトを休んで家に帰って、空に勉強させる。
バイトを休むと生活が苦しくなるけど、カップラーメンの毎日で我慢する。
だからこれだけは失敗させられない。
受験の日の朝には、空が起きるより先に起きていた。
母親のように空に支度させて、会場まで送ろうとしたらそれは遠慮されて、おとなしく家で待つ。
空には俺の受験のときのお守りと、今年の初詣で俺が買ったお守りを持たせた。
できる限りの勉強はさせてきた。
試験科目は俺より少ないし、できるはずだ。
思っても、そわそわと落ち着かない。
そんな俺を見て、親は呆れてくれる。
「もう結婚したら?受かっていたら4年待ってあげたほうがいいけど、落ちていたら結婚でいいじゃない」
親にそれを言われるってどうなんだろう?
俺の親も空の親も応援はしてくれないけど、反対もしない。
結婚は俺の夢。
空が落ちていたら現実になるかもしれない。
失敗しても別の希望が出てきて落ち着けた。
空が帰ってきたら、そのあたりの話をちゃんとしよう。
おまえが落ちていたら結婚するぞと。
「結婚しても養えないか。やっぱり大学卒業してからで。式を挙げたいなら貯金しなさいよ」
親はまた違うことを言ってくれて俺は振り回される。
そうだよな。
俺が学生でバイトじゃ養ってやれない。
金に苦労させるのは不和のもとになりそうだ。
ちゃんといいところに就職しないと。
空にはウェディングドレスを着せたい。
人生、なるようになる。
ただ、そのそばにはいつも空にいてほしい。
どっちつかずの空に、俺はこれからも振り回されるだろう。
空はそんな俺を見て、笑って楽しみやがるんだろう。
それも、まあいい。
俺は空が大好きだから。
Fin 2015.3.9
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