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ただの幼なじみ。
されど幼なじみ。
兄妹のように育ってきたけど、兄妹じゃないから恋愛することに反対されることはない。
兄妹のように育ってきたから、ある程度の許容範囲がお互いに広い。
疎遠になっても、きっかけがあれば以前に戻ることも不可能ではない。
花火にいくと空の今の友達に偶然に会った。
前から知ってるみるくちゃんもいたけど、知らない子もいた。
学年がかわってクラス替えがあれば、よくつきあう友達も変わったというところかもしれない。
声をかけてきたし、笑って話しているし、孤立しているというものはもうなさそうだ。
「彼氏?」
俺のことをよく知らないらしい空の友達が俺を見て空に聞く。
なんて答えるのか気になって、俺は何も言わないでおいた。
「勉強教えてくれる先生」
空はそんな答えを出して、少し期待していた俺は不満。
空と繋いでいた手を強めに握ってやる。
「黒川先輩だよ。1つ上の先輩で、先輩たちが王子って呼んでた」
「あー、知ってる。近くで見たことなかった」
などと盛り上がり始めてくれる。
まだ王子。
そこは苦笑いだ。
「なんで王子なんですか?」
ものすごくストレートに聞かれた。
王子と呼ばれ始めたきっかけ。
それを思い出してみる。
「1年のときにお姫様抱っこで怪我した女の子を運んだからかも」
あのあたりからそうなった気がする。
普通に擦りむいたとかなら、そんなことするわけないけど。
窓ガラス割って血塗れになっていた。
まわりはもちろん悲鳴。
俺も近くにいて焦って保健室に運んでいた。
まぁ、それ以外にも誰かを助けるようなことをちょくちょくしていたから、なんかそうなった。
王子と呼ばれて英雄気取りしていた俺が悪かったから、もう王子はやめてもらいたい。
調子に乗りすぎた。
今思うと恥ずかしい。
「うわー、王子。かっこつけなんですか?」
ものすごく遠慮なく聞かれて、俺はもう何も答えたくない。
かっこつけているつもりは俺にはない。
そのへんは俺の学年の女に聞いてもらいたい。
たぶん言われる。
ノリのいいお調子者。
変人と答えるやつもいると思う。
それでも仲良くしていただけた。
俺の顔しか知らない下の学年は俺のファンかもしれないけど。
なんにも知らないだけ。
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