辞めるとか言ったけどただの転校だった

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「あらもうこんな時間!?ごめんなさい、ママお買いものに行くわね!多分陽ちゃんも康平ちゃんももうすぐ帰ってくると思うから!」 「ん、分かった。いってらっしゃい」 今夜はご馳走作るからね~とバックを持って出て行った母さんを見送り、暇になった俺はというと何か面白い番組でもやってないかとテレビのチャンネルを変える とくによさそうなものもなかったのでとりあえず情報番組を見ることにする 芸能人のスキャンダルや政治、事件の情報が流れていくのをぼんやりと眺めていると勢いよく玄関の扉が開く音が聞こえた 驚いてそちらに目を向けるとばたばたと慌ただしく現れる小柄な人物 弟の陽(ハル)だ 今年中学生になったばかりでまだ幼さが残る顔立ち しかし整っていて今は可愛いという部類だが将来イケメンになるだろうと予想される 身長は俺より5cmほど小さいがまだ成長期半ばなのですぐ追い抜かれるだろう …同じ親から生まれたはずなのにこの違いはなんなんだと思わなくもない… 「りんにいぃ…りんにいだぁ…」 生き別れた兄弟と再会したかのように感極まった声で絞り出すようにそう呟いたと思うと勢いよく抱き着かれた 「はいはい、ただいま」 陽の背中に手をまわしてぽんぽんと叩いてやる 陽は寂しがり屋だからなと陽が満足するまでこのままでいることにした と、そのときまた玄関が開く音がしてけだるげな声が聞こえた 「ただいま~」 兄の康平(コウヘイ)だ。 俺の2つ年上で今年大学1年生。
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