テイク・オフ

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/テイク・オフ 時は、宇宙開発ラッシュの50年後。 いわゆる宇宙船が、富豪たちの間で流行している時代。 多くの大金持ちが、宇宙に行き、そこで永住し始めていた。 「こいつもだ、宇宙に持っていこう。」 「わかったわ、これが最後ね。」  ここは地球。  1組の30代半ばの夫婦が、宇宙船に荷物を詰め込んでいた。 「さて、荷造りは終わったぞ。」 「後は?」 「これで終わりだ、さぁ、宇宙船に乗って。2人でコロニーへ行こう。」  宇宙船を指さした。  形は、ワンボックスカーを大きくしたような物だ。 「そうね、ジム。あなたが大統領の弟だって知れ渡ってから、変な人が沢山寄り付いて来るんだもの、静かな宇宙へ行けば少しは楽になるかしら。」  この国の現政権の実権を握っているのは、この男ジムの、兄であった。  それからというもの、毎日数十人が家に訪問してくるようになった。  ジムは、兄の支持を落とさないため丁寧な接客を心がけているが、それも限界があった。 「ああ。金に飢えた奴らは、大統領の兄さんと近い関係の人間から伝って金にありつこうとする。見ているだけでおかしくなりそうだ。」 「あの秘密もあと少しでバレてしまう所だったわ。いつまで隠し通せるのかしらね。」 「だからこそ、宇宙へ行くんだよ。アリエス、行こうか。」 「ええ、行きましょう、ジム。」  あの秘密。  ジムの兄が大統領になるまでの数多くの愚行だった。  偶然その秘密を知ったジムとその妻アリエスだが、兄の必死な説得に、秘密にする事にした。  その秘密を、マスコミたちは言葉巧みに暴こうとする。  ごまかす術も、もう底が見え始めていた。 「扉を開けるぞ、ちょっと離れてくれ。」  ジムが鍵のボタンを押すと、自動で側面から階段が下りてきた。  アリエスはジムの腕に抱き付き、宇宙船へ入っていく。  中に入るとそこは、中々広い、真っ白な部屋だった。  ソファとテレビも置いてある。 「アリエス、君はここで映画でも見ててくれ。」 「え~、一緒に見ましょうよ?」 「管制塔とのコンタクトがいるんだ。楽しみはそれからだ。」 「ええ、わかったわ。」  ジムはリビングからダイニングを抜け、コックピットに入る。  ヘッドセットを付け、チャンネルを管制塔へ設定する。
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