裏の手引き

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 スペース・フライト・シップ本社、データ管理棟。 セキュリティルームに1人の男が入り、言った。 「管理長、お電話が。」 「誰からだ?」 「それが、名乗らないんです。」 「なら切っておけ。そういうのは無視しろ。」 「何度も切りましたが、その度に掛け直して、重要な話があると。」  管理長は眉をひそめた。 「少し席を外す。何かあったらすぐ知らせてくれ。」  管理長は独り男を残し、セキュリティルームを出た。 「・・・さてと。今から1分、セキュリティを解除する。早急に済ませろ。」 「”α了解。”」 「”β了解。γ、お前こそ見張っておけよ。”」 「大丈夫だ。電話が時間を作ってくれる。」  セキュリティルームの”γ”は慣れた手つきでセンサーを解除する。 「できた、データを消してくれ。」  防犯カメラ越しに見え隠れする、”α”、”β”の影。  それは素早く移動しながら、ある部屋に入った。 「こちらα、着いたぞ。」 「”γ了解、今から10秒、データアクセスを遮断する。”」  ”α”が大きなサーバーの前でしゃがみ、PCを接続する。  そして、”SS\304\Jim\data\money”のデータを取り出し、消去した。 「”こちらγ、消去確認。”」 「消去確認了解、急いで戻るぞ。」  ”α”と”β”は、駆け足で出口へと移動した。 「3、2、1、セキュリティ回復。」 「”こちらα、γお前も早く戻ってこいよ。”」 「あいつの電話が終わったらな。」  すると、後ろのドアが開き、管理長が入ってきた。 「何もなかったようだな。戻っていいぞ。それと、これからは電話してきた奴には、名乗らないと電話には出ないと言ってくれ。」 「わかりました、管理長。では。」  そう言い残し、”γ”はセキュリティルームから出ていった。  彼らは任務を成し遂げた。  大統領直々の”ジムという男の金銭データを、全部消せ”の依頼を。  理由を求めない、ただ”金”に動く、自分たち傭兵はそれだけだった。 「”こちらデータ管理班、セキュリティルームで10秒のアクセス拒否があった、何かありましたか?」 「こちらセキュリティルームのデータ管理長、特に何もなかったぞ。」 「”データ管理班、了解。監視を続けてください。”」
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