助かる道は

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 ここでは、冷静な判断力と、迅速な対応が問われる。  ジムはまず、ヘッドセットを頭に掛けた。 「”はい、こちらスペースレスキューです。”」 「こちら、SS304、機体は無事だが動けない。データが消えた、らしい。」 「”わかりました、では現在の座標を教えてください。”」 「B22のx.323-y.72-z.2393だ。」 「”その一帯はダストエリアなので救助に向かえません。”」 「あぁ・・ん、え、なんだって?」 「”ダストエリアです。”」 「ダスト付近では警告音とか、普通は鳴る物じゃないのか?」 「”おそらくデータ破損によるものでしょう。エラー解除させますので、計器類には触れず、そのままお待ちください。”」  ジムは計器パネルから一歩退いた。すると、コックピットの画面が一瞬青一色になり、元に戻った。 「”では、最寄りコロニーへのルートデータを送ります。自動操縦にしてください。到着次第、そのコロニーへ救助隊を送ります。”」 「わかった。時間は?」 「”コロニーへは約1時間、救助隊到着は2時間程度です。”」 「もう少し早くできないのか?」 「”では、救助隊をそのコロニーへ待機させておきますが、別途で料金がかかります。”」 「早いに越したことはない。」 「”わかりました。”」  相手が無線を切った。  ジムは振り返ると、後ろでアリエスが様子を見ていた。 「・・・何とか助かるのよね?」  ジムは頷いた。 「よかった~、後どれくらい待てばいいのかしら?」 「1時間程らしい。もう映画はやめよう。」 「そうね。あ、グリーンティー飲みましょ!」  アリエスの中で今ブームになっている、抹茶。  ジムには、その苦さは耐え難いものだった。 「あなたも飲む?」 「遠慮しておくよ、ほら、君が飲む分が無くなってしまう。」 「うふふ、ホントは飲めないクセに~。」  2人は笑いあった。  ジムには、今この時間はとても充実しているように思えた。  それはアリエスも同じだった。 「まるで廃工場だな。ゴミだらけだ。」  ジムは窓の外、ダストエリアを見て、ふと呟いた。  まだ人が宇宙に疎い頃、人類は多くの衛星を飛ばし、実験や研究をしてきた。  これは、技術向上の代償と言うべきか。
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