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「へー……俺にそんな事聞くわけね。お前結構、酷いヤツだな」
「だから最初に、謝っただろ……」
「いいよ別に、教えてやっても」
涼は懐から手を出し、じりじりと響に近寄る。その目付きは妖しく、蝋燭の灯に照らされ濃い陰影のついた顔は、妖艶に笑う。
「まさかタダで教えろなんて言わねぇよな?」
気が付けばもう身動ぎすれば触れ合う程の距離で、響はどきりと身を引く。
「別にさぁ、お互いのモン慰めるだけでもいいんだけど、やっぱ男としちゃあ、組み強いて、突き上げて、支配したいと思うよなぁ」
さらりと、涼は響の髪に手をさし入れる。首を捻り顔を逸らす響の顎を掴み、強引に視線を絡ませ鼻をすり合わせながら、顎を掴んだ親指で響の唇を撫でる。
いざとなったら蹴り上げて逃げてしまおうと思っていた。非力な女ではないからそれが出来ると思っていた。けれど響はすっかり体が縮み震えてしまって、言葉も出ない。指一本さえ動かせず、涼の口から溢れる不吉な言葉にますます体は硬直する。
「……泣き叫んでも、抵抗しても、それを押さえつけて自分のモンにしてぇと思うよなぁ。誰かに貫かれる前に、俺を刻み付けたいって、思うよなぁ……あいつの名前を呼んでも、遠い常世までお前の声が届くかな?」
「や……やめ、……っ」
とうとう響の目尻から涙が溢れ、頬を伝って涼の手を濡らした。
カチカチと奥歯が鳴るままやっと声を出せば、殆ど言葉にならなかった。抵抗出来ない響の唇に、ニヤリと顔を歪めた涼の唇が触れるか、触れないか。
響はきつく目を閉じ、歯を喰い縛った。
どうしよう、このままもし、涼に襲われてしまったら──
現実逃避をしようとする心と葛藤していたが、一向に響の体に触れるものは無い。うっすら瞼を開け様子を伺えば、布団の上で胡座に懐手の涼の姿がぼやけて見えた。
「……え?」
今度は両の目でしっかり見れば、目が合った涼が先程迄の恐ろしく妖艶な笑みではなく、悪戯っぽくニヤリと口角を上げた。
「俺がお前を襲うわけねーだろ。んな事聞いた罰にちょっと脅かしただけだって」
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