后妃の悩み

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 失礼を承知で言えば、千も二千も生きているのに精力は未だ衰えず、好き者だと言うのが秌の率直な印象だった。 「ひょっとして……まだ主上のお手がついていないのですか?」  響は真っ赤になりこくりと首を落とす。  煌隆の元に嫁いで三ヶ月。愛しい人が求めるのは唇だけで、毎夜その先はただ眠るだけ。 「まさか、あれから毎晩主上の寝室でご一緒してらっしゃるのに?」  あれから、と言うのは二月ちょっと前。初めて煌隆が響を寝室に招き入れた夜の事。それからずっと、響は煌隆と枕を並べて眠っている。  お陰で今は響の寝室は着替えるだけの部屋になっている。 「全く。ちょっと、良い感じの雰囲気になった事はあるんですけど、それから先に進まなくて」 「主上がまさか、二月も。どこかお体の具合が悪いのでは」 「そんな感じじゃないけど……だからオレ、ちょっと不安になっちゃって」  煌隆は響の性別など取るに足らない些細な事だと言った。晩酌の時には必ず響を膝に乗せ額を撫でてくるし、ところ構わず口付けをせがむし、二人きりになればその細長い指で、響の体をうっとり撫でる。  生殺し状態で眠った事もしばしば。  愛されていないとは感じない。むしろ大事にされている。  しかし、いざ体を重ねるとなるとやはり、響が男である事で二の足を踏んでいるのではないかと、小さな染みのような不安は少しずつ広がっている。 「わかりました! 私にお任せ下さい!」 「え、任せるって」  秌は鼻を膨らまし、大きく胸を張って拳でどんと叩く。 「主上がお手をつけない理由をそれとなく私が探ってみましょう」 「え、それってちょっと不安なんですけど」 「大丈夫です! まさか突然主上に訪ねたりしませんから!」  秌は響から湯呑みをひったくり、両手を握り瞳を輝かせる。 「その代わり、と言っては何ですが、無事解決した暁には感想をお聞かせ下さいな!」 「か、感想って」 「二千年近く生きていて初めての事ですからね、私も興味津々なのです」 「うう……」  有無を言わせぬ剣幕に、秌ではなく将極に相談すれば良かったと思う響だった。
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