后妃の悩み

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 布団に下ろされ、響は続きを期待して覆い被さる煌隆を上目に見たものの。  一度視線を外し煌隆は眉間に皺を寄せ、響の顔に掛かる自分の髪をよけて一度額に口付けを落としただけで、響の体に触れる事もなかった。  響は煌隆の隣で聞こえないように小さく溜め息を落とし、黙って目を閉じる煌隆に声を掛けた。 「……煌隆、起きてる?」 「ああ……どうした」  煌隆は細く目を開き、横目で響を見てからすぐにまた瞼を閉じる。 「あの、今度現世へ行っても良いですか?」 「……一人でか?」 「オレだけで木戸を通れるなら、一人で行きたいんですけど……」 「何をしに?」 「ちょっと、友達と話がしたいんです」 「……松山涼か」  少しの間が空き、煌隆は嫌悪を露に声を低くして涼の名を呟く。  以前もだったが、煌隆は涼の事になると途端に不機嫌になってしまう。響はその理由がわからず、いつも首を捻る。 「何故だと? あやつがお前に好意を持っておるからだ」 「え?」 「二人にすると何をしでかすやら」 「もしかして煌隆……それって嫉妬してる?」  すると煌隆は寝返りを打ち、響に背を向けて黙ってしまった。 「え、本当に? だからいっつも涼に喧嘩ごしだったの?」  体を起こして煌隆を揺すってみるが、黙ったまま響を見ようともしない。 「嘘、煌隆かわいい」  きゅうっと胸が暖かくなり、響は煌隆の背中に抱きつく。肩越しに顔を覗けば、僅かに唇を尖らせちらりと響を見て鼻を鳴らす。 「心配しなくたって、煌隆以外の人に何もさせません」 「……一度、松山涼と唇を重ねておったではないか」  やっと口を開いたかと思えば、まだ不機嫌に声は低い。 「え、見てたの!? あ、あれは、別れの挨拶みたいなもんで……煌隆とするのとは、全然違うよ……」  尻すぼみにぼそぼそ呟く。煌隆は体を返し、小さく座る響の腕を引き胸に抱き寄せた。額を撫で、口付けし、きつく抱きしめる。 「少し言葉が過ぎたな。なに、心配はしておらんよ……現世で響を知る数少ない者だ、話せるうちにゆっくり話して来るといい」 「ん……ありがとう」  後数年もすれば、二人の違いが目立つようになるだろう。そうなれば自然に足が遠退く。不変の響と現世の涼が気兼ねなく顔を合わせられるのは、今のうちだけ。
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