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「みんな、漆原を初めて見たかもしれんが、一応クラスメートだからなー。わけあってあんま紹介できんのだがな。さ、一時間目は移動教室だからな。遅れるなよー。」
担任の先生はいつものように朝のホームルームをさっさと終わらせて出て行った。
漆原くんの周りには人が集まっていた。主に女子が。
「ねー漆原く・・・。」
何人かの女子が近づいてすぐに戻ってきた。そして、そそくさと移動教室の準備をしていた。
みんなが移動しても漆原君は席で動こうとしなかった。私はなんとなくみんなから出遅れ、内藤くんに引き寄せられるように近づいた。
彼の顔はうつむいて見えない。
「漆原くん・・・。移動教室だよ。私、榊るいっていうんだ。」
初対面の人にはこちらか自己紹介すれば、九割がた好印象を与える。このとき笑顔を忘れずに。
漆原君がピクリと動く。
「漆原・・・」
そのまま黙ってしまった。
あ、あれもしかして今の自己紹介かな。えっとこれは初めてのパターンだ。
私がドギマギしていると・・・。
彼が顔を上げた。
・・・。
真っ赤な眼帯をしていた。眼帯は右目を隠していた。
彼は左目だけで私を見た。
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