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「う、漆原くん!こんなとこで寝ちゃだめだよ!授業いかなきゃ・・・。」
私は寝っ転がっている漆原君をユサユサとゆすった。
「そうなの・・・。じゃ移動する。」
彼はもそもそと立ち上がり、動き出した。身長は私と同じくらいだ。男の子にしては少し小さい。
私はほっとして、彼の後ろをついていった。
眼帯のせいなのか、ときどき漆原君は壁にぶつかりそうになった。おろおろと後ろを歩いてついていくうちに、階段をのぼっていることに気が付いた。
私が気が付いたときは、もう手遅れだった。
立ち入り禁止の看板をとっくに無視して、漆原君は屋上の扉を開けた。
「あ、ここ・・・。」
眩しい太陽の光が私の目に突き刺さった。思わず目を細める。
「ここならいいよね・・・。」
漆原君は少し肩で息をして、屋上に入っていった。
「あ、だめだよ!」
私は勢い余って、階段で転んだ。よろめいた私は漆原君を屋上へと押し出し、倒れこんでしまった。
漆原君はそのまま前に倒れた。
私は漆原君の背中に覆いかぶさるような形になった。
「ご、ごめん漆原君・・・。」
私は慌てて体をよこにずらした。 そして漆原君をおこした。
「うーん。」
体を起こすと、漆原君は私に抱き付いてきた
「あ・・・。」
彼はそのまま私に体を預け、胸辺りに顔をうずめた。
「や・・・漆ばら・・・くん・・・?」
私は彼の異変に気が付いた。
「くー・・・。」
彼は熟睡していた。
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